室内建具の仕様で間取りや暮らし方が大きく変わる

こんにちは設計の仲田です。

家の中の建具って住まいの中で視覚的に大きな割合を占めています。個人的には壁のガラとか色よりも家の雰囲気を大きく左右すると思ってます。

でも建具って雰囲気だけではなく、間取りの自由度にも大きくかかわります。

例えば下の写真のような室内ドアって今の多くの住まいでは標準的に採用されてますが、こうした建材メーカーさんの室内建具を使うと、間取りの計画にも大きく影響するんです。

以下詳しく解説していきますね。

色も豊富でコストも安く、拭き掃除もカンタンな建材メーカーによる建具は、多くの家づくりで一般的に採用されています。

既製品の室内建具にはない引き込み戸

私たちのような業者は建材メーカーさんが作っている室内の建具を既製品といっています。

通常は建具の枠材とセットになっています。工場生産品だから安いし、現場では組み立てて取り付けるだけなので取付費も抑えることができる。

サイズもいろいろと取り揃えていますし、色や風合いもいろいろあるので、お客さんの好みで選べる、といいことづくめですね。そのため分譲住宅や分譲マンション、その他多くの住まいで採用されています。

 

既製品の建具ではよく使うサイズが数種類ラインナップされていますし、特注で製作もできるので今の一般的な住まいであれば、特に問題なく使うことができます。

 

でも私たちのリノベーションでは基本的に使っていません。なぜかというと、プランの作り方に制約が出てしまうからなんです。

私たちが使っているのは木の枠材。木であれば、枠の幅や厚み、そして長さがある程度思いのままに計画できます。その枠に合うように、建具職人さんに建具を取り付けてもらうわけです。

 

例えば下の図は部分的な建具の詳細図なんですが、壁の中に引き込むように計画しています(正式名称かどうかわかりませんが、引き込み戸といってます)。

こうすることで、建具が邪魔になりにくく、壁が利用できる利点もあるのでよく計画する納まりなんですね。

 

 

ちなみに斜線がかかっている四角の部分は木の枠材。数字は枠材の幅です。カモイ図Cという材料には溝が加工してあり、吊りレールをはめ込むようにしてあります。

図面でUBとあるのはユニットバスのことで、設置する場所が微妙にずれたりもするので、設置位置に合わせて67と書いてある枠の幅を現地で調整する計画です。

こういう枠セットの既製品はたぶんないんです(もしあったらすみません・・)。

 

 

 

なお上記とは違う場所ですが、引込戸は下記のような感じになります。玄関を区画することで暑さ寒さを軽減させるのですが、この用途をドアにしてしまうとかなり使いにくいと感じます。

例えば玄関部分は寒いので引き込み戸をよく設けます。今は開いている状態。

閉じるとこんな感じです。これを既製品で行おうとするとなかなか難しい面があります。なおこれがあるのとないのとでは寒さに大きな違いが出ます。

ちょっと図面まで出てきてわかりにくかったかもですが、引き込み戸のような建具の納め方って、マンションリノベーションのプランを考える上では非常によく採用していて、いろいろと都合がいいんです。

もしも既製品の建具を使うことが前提となると引き込み戸のような計画ができなくなるので、間取りにも影響がでてくるのです。

 

引き戸を基本としている理由

実のところ、こうした苦労は引き戸を採用しているから起こる問題。なのでドアにすれが何の問題もありません。

ただドアって閉めていることが基本。ドアを固定する金具が床にもついてはいるんですが、ドアを開け放しにする過ごし方は少し違和感があるし、ドアノブとか邪魔な感じになる。

 

それに比べて引き戸は開け放していても邪魔になりません。また回遊性のある間取りとの相性もよいので、開放しておけば冷暖房もよく効きます。

 

個人的にはドアは開閉時に空間的な場所をとるのがマンションには特に合っていないと思っていて。

引き戸って、ドアよりも施工的には少し手間暇がかかるけれど、引き戸の動きは部屋の出入り口を直線状の動きで区画するので建築的な意味合いで言えばドアよりもシンプルな方式です。

そうしたシンプルさはマンションという比較的コンパクトな住まいでの暮らしの利便性を高めてくれると思うんですね。

 

木の枠材は対応力が幅広い

中古マンションでは多くの場合、天井から梁が出っ張っています。

この梁の下に引き戸を計画する場合も出てきますが、こういう場合はできるだけ高さを確保しつつ、きれいに納まるようにしなければなりません。

既製品ではなかなかうまくできない場合でも、木の枠材であればうまくいくのです。

梁の下でなるべく高く建具枠を取り付け。周りの枠材ともつながりがきれいに納める。

その他にも施工事例にある「広いLDK 空間を置き家具で暮らしやすくする家」の中に、子供室を区画している写真があります。

ベッドとベッドの間に引き戸を仕込んでいて、こういう計画はやはり既製品ではできません。

 

また私たちのマンションリノベーションの間取り図はかなり細かくて、下図面のような感じでミリ単位で設定しています。

元々のマンションの施工精度が悪かったり、リノベの際の施工誤差もあるので、多少の誤差はでますが、こういう計画は木の枠を使って建具を計画できるからこそでもあるんです。

 

ちょっとわかりにくいことも多いかもですがなんとなく、できることが広がるんだ、と理解していただければ。

 

木のマンションリノベーションには建具職人の技術が不可欠

マンションは戸建てと比べると決して広いわけではないですし、柱や梁の出っ張りもあったりして制約が多い・・・。

そこに既製品の建具を使うことによる制約まで加わってしまっては、暮らしやすい住まいをつくることがかなり難しくなってしまいます。

 

そういう意味で私たちのリノベーションでは、建具の計画は現場に合わせて、サイズや細かな「納まり」を考えて「木」でつくっています。

間取りの全体の中で、無駄なく建具のサイズを設定することができますし、既製品と比べれてかなり自由な計画ができます。何より暮らしやすくなりますしね。

 

木の枠でつくる場合、腕のいい建具職人は不可欠です。なんだかものすごく贅沢なイメージがあるかもですが、既製品とは違ってメンテナンス性がよく、長く使えますし、なにより、暮らしやすくなるのが魅力です。

見た目としても、木がもつ風合いの方が理屈抜きで心地のいい雰囲気をもたらしてくれるのも大事な部分だなぁ、と思ってます。

 

思っている以上に建具が住まいに与える影響って大きくて、仮に間取りや内装が同じでも、建具が違うだけで随分と印象が変わります。

ちなみに私たちがよく採用しているのがシナという木を使った引き戸。表面は色むらを整える意味で自然塗料仕上げとしてます。

下写真のリビングと子供室を仕切る板戸がそれです。

※画像クリックで建具の取付動画視聴ができます。

あまり濃すぎないので、重たい印象が少なく、落ち着いた感じ

シナよりも濃い目の建具にしたい方もいるんですが、その場合はアメリカンチェリー材を使います。

いい色味ですね。なお木の模様はその時々で違ったりします。

 

他にも格子の建具だったり。

 

建具で全体の雰囲気が大きく変わるのが少しだけでも感じていただけたら・・

 

不思議と変な新築感みたいなものがないのは、手仕事感を感じるからではないかなぁと思います。

以前、引っ越ししたばかりのオーナーさんからは「なんだか随分前から暮らしている感じがします(笑)」という感想をいただいたこともあります。

 

ということで、マンションという環境の良さを最大限に引き出すために既製品を使わないリノベーションというものがあることを知っていただけたら嬉しいです。