「失敗しない家づくり」を読めば失敗しない?

住まいって商品ではあるのですが、普通にお店でモノを買うというのとは違って、たぶん、人生でも一番高い買い物ですし、打合せや検討の時間もものすごくかかりますから、みなさん、家づくりで失敗したくない、いい会社で建てたい、という気持ちだと思います。

そんな気持ちを汲み取るかのように、ネットや雑誌などの書籍では「失敗しない家づくり」というキーワードでいろんなアドバイスや家づくりの内容が書かれています。中にはこの工法でなければだめだ!という攻撃的な感じのものもあったりしますね(攻撃的なのは苦手)。

住まいをつくる経験は多くの方が初めてだったりしますから、いろんなアドバイス、情報があるのはいいことだなぁ、と思いますが、じゃあ情報の通りにしたら失敗しないのか?と言ったら、ちょっと違う気がするんですよね・・・。

まあ、知識とか、住まいの性能とか、工法とか、予算とかいろいろ大事なことではあるのですが、そういう条件的なものすべてをバランスよくまとめるのは人間ですし、ただ条件をまとめればいい、というものでもなくて好みとか、感情ということも関わってきます。

だから「コミュニケーション」が大事だよなぁ、と思うんです。

でも、家をつくる側が「建て主さんの要望をただ聞く」のがコミュニケーションではないですし、建て主さん側も「自分の要望を伝えること」がコミュニケーションではないです。ちろん、聞くこと、伝えることは大事ですけど、それは「コミュニケーションの一部」であって、一方から他方へ「伝達されているだけ」です。

これだけではいい住まいをつくりあげることはできないと思います。まず、つくる側は「その要望がどういう理由からきているのか?」を知ることが大事。

例えば提案したプランの打合せの時に、トイレの位置を変えたい、という要望が出たとします。でも実はトイレの大きさを大きくしたい、とか、リビングから離したい、とか、そういうことが本当の理由であるかもしれません。

もしかしたらトイレの位置をずらさなくても大きくすることができるかもしれませんし、その他の要望や条件を優先した結果、トイレの位置が決まったのかもしれませんから、位置を変更することで他の要望が満たせなくなるということもあるわけです。

なので「そうしたい理由」を確認した上で、要望を満たすことが大事であり、それには「お互いの意見を交換しあうこと」が絶対に必要です。でなければ本当の意味での要望を満たすことができません。

こんな言い方は失礼かもしれないのですが、建て主さんも自分が何を望んでいるのか、混乱してくる場合もあるんですよね。要望が矛盾してしまっていることもあったりしますし、うまく要望を表現できない場合もあります。

だから意見交換をすることで建て主さんは自分の考えが整理されていきますし、「自分でも気づいていなかった要望」もしくは「自分がうまく言語化できなかった要望」に気づいたりします。

このように建て主さんの考えを整理したり、今まで言われなかった「本当の要望」を新しく引き出すことができると、つくる側からはさらに違った提案ができるわけです。

互いにやり取りをしていくことで考えを共有していくことができますし、何より「お互いから引き出しあうこと」でよりよい住まいをつくることにつながるわけで、これが「コミュニケーション」だと思います。

住まいについて、工法とか、デザインとか、性能とか、予算とか、大事にしたいことはいろいろあると思いますが、その前にちゃんとお互いの考えを共有できるように、協力し合いながらコミュニケーションできる関係ができていなければ、どんなに優れた工法であっても何が優れているのかちゃんと理解できないし、デザインの善し悪しもつくる側の勝手な好みでできてしまったり、予算を超える家づくりになってしまったりして、うまくいかないのではないかなぁ、と思います。

だから、私は打合せの時に、変更や要望が出てくると、けっこう、質問します。どうしてここを広くしたいのですか?どうしてここに窓をつけたいのですか?どうして玄関はこの方角がいいのですか?どうして対面キッチンがいいのですか?どうして・・・などなど。時にはそれが意地悪く聞こえることもあるかも(苦笑)。

でもいろんな質問をして見えてくることがあるんですよね。あ、そういう理由なんですね、ということがでてくるんです。すると、そういうことならこういう方法もありますよ、という感じで提案する幅が広がるんですね。建て主さんにとっての住まいの暮らしやすさにつながります。決して変更すると図面の変更がめんどくさい、とかそういう理由ではないことを理解していただけたらと思います。ご容赦願いますね(笑)。

でここまで言っておきながらなんですが、コミュニケーションがちゃんとできていれば失敗しないか、というともう一つ大事なことがあります。

・・・というところでずいぶん長くなってしまったので、続きはまた次回に~。

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