マンションの床に必要な耐久性と防音性

築20年程度のマンションの床の状態。表面がはがれてきます

こんにちは。設計担当の仲田です。リノベーション前提で中古マンション購入する際には必ず調査をしているのですが、築年数としてはだいたい20年以上の物件がほとんどです。

で、たいていの場合、床がかなり傷んでいます。住み方によっても差はありますが、過去の調査物件では築10年ちょっとくらいで傷みがでていた場合もありました。

全てを解体して間取りも新しくするマンションリノベーションの計画ですから、床も新しくなるので問題はありません。

でも、いくら新しく床を張り替えたからと言っても、その後20年程度で同じように張り替えることになるとしたら、金銭的な負担はもちろん大きいですが、生活しながらの床の張り替えはかなり大変です。

なので耐久性が高い、張り替える必要がまずないような床であればそういう問題は生じません。

ただ中古マンションリノベーションの場合、床の素材だけの話ではなくて防音に関しての配慮も必要となってくるのでカンタンな話ではないんですね。

というわけで、マンションに適した床材とは何か、耐久性を踏まえて具体的にはどんなものを選んだらいいのか、防音性能はどうかなど、検討してみました。

よくある防音直貼りフローリング(一般的な合板床)は耐久性に難あり

防音フローリングの断面部分。細くスリットが入っていることが分かります

多くのマンションでよく採用されているのが裏にクッション材が張り付けてある「防音直貼りフローリング」というタイプ。コンクリート面に直接貼り付けるためコストも抑えやすいのです。

写真のように床の裏側に溝が何本も入ってます。この溝とクッション材の効果により、歩くとふにゃふにゃと柔らかい感触になります。これにより音を吸収する効果が高まるというわけです。

ただ、この床材の標準的なタイプは、合板部分の厚みが9mm程度と薄いことに加え、歩くたびに床が繰り返し「しなる」感じになり、だんだんとダメージが蓄積されていきます。

そのため特によく歩く部分などは、合板と合板の接着部分が冒頭の写真のように剥がれてくるリスクが高くなるというわけです。

実際にこれまで中古マンションの状況を何件も見てきた経験から判断する限り、床の張り替え、又は部分補修をしている物件が多いのも事実。

客観的に考えても10~15年、長くても20年程度で可能性が高いということは承知をしておいた方がよいでしょう。

なお、床の張り替えをするとしても、暮らしながらではかなりのストレス(ホコリ、音、養生など)ですからその点は我慢を強いられますし、部分補修の場合は直したところだけが新しくなるので色味の違いもでます。

そういうことを考えると、一般的な防音直貼りフローリングはおすすめしできる商品とはいえません。

そこで次に検討してみたいのがWPCと言われる床材です。

直貼りフロアなら耐久性が高いWPCフロアがおすすめ

WPCとは木材とプラスチックの複合材料のことです。木材に樹脂を注入し、加熱硬化させて製造されます。木材の美観を損なうことなく木材よりも力学的強度、寸法安定性、耐候性、耐火性、耐薬品性等が向上され、特に、耐摩耗性に優れます。

要するに、ものすごく硬くて丈夫になるというわけですね。ダイケンさんのホームページにWPC床材の説明があります。

詳しく知りたい方は WPC床材について をご覧ください(メーカーのホームページ更新などによるリンク切れの際はご容赦ください)。

耐久性はもちろん、掃除もしやすいですね

動画を見ると同じ直貼り防音フローリングとの比較があってかなりの違いがあるのがわかります。

中古マンションの調査ではまだ見たことがないので実際の耐久性を体感しているわけではありませんが、一般的なタイプよりも格段に高い耐久性があります。当然のことながらコストは高めになりますが、ここはコストを抑えるべきではないですね。

シートフローリングはやめた方がいい

その他、通常のフローリング床と同じような感じなのですが、合板とMDFを基材として表面にオレフィンシートを貼った床材もあります。ちなみにMDFというのは下記のとおり。

MDF(中質繊維板)はミディアム・デンシティ・ファイバーボード(Medium density fiberboard)の略で、木材チップを原料とし、これを蒸煮・解繊したものに合成樹脂を加えて成形します。
また、MDFのように木材を原料とし、これを繊維化してから成形した製品を総称してファイバーボードといい、MDFのほかに硬質繊維板(ハードボード)、軟質繊維板(インシュレーションボート)があります。
引用元:全国木材組合連合会

MDFは建築材料ではよく使われるのですが、加工性がよくて平滑にすることも簡単にできるため、MDF表面に木のような柄をプリントしたオレフィンシートを貼ります。するとフローリング床のようなものになるというわけです。

写真は直貼り用の床ではないのですが参考までに

オレフィンシートは比較的硬くてそこそこの耐久性はあるのですが、残念ながら角が硬いものなどを落とすと表面のシートがめくれます。こうなってしまうと表面に水をこぼしたりすれば、MDFとオレフィンシートの間に染み込みやすくなります。

MDFは耐水性があるタイプもあるのでそういう仕様であればまだ大丈夫かもしれませんが、オレフィンシートとMDFが剥離することも懸念されます。長い年月使うことを考えると正直心細く感じてしまいます。

コストはたぶん一番安いと思いますが、床材の耐久性に不安があるものを積極的に使う気にはなれないのが正直なところですね。

あとシート印刷の技術は本当にすごくて、見た目は本物の木みたいに見えるのですが、正直、その「質感」が好ましく思えない・・・ということもあります。これは好みの部分ですが・・・。

角の尖ったものが当たると表面がめくれます。こうなる頻度は少ないとは思いますが、ちょっと不安になります・・・。

 

正しく工事をすれば直貼り防音フローリングよりも乾式二重床工法の方が防音性能が高い

ここまで見てきた床材は細かな違いはあれど、すべてコンクリートに直接貼り付けるタイプ。このタイプの防音性能ってまあまあ、あります。

でもそれは、スプーンなどモノを落としたり、スリッパでパタパタ歩くなどで出る比較的高い音(軽量床衝撃音といいます)に関してだけ。

人が歩く際のどんどん、と響く低い音(重量床衝撃音といいます)に関しての防音性能については、床が張ってあってもなくてもほぼ変わらないんですね。

重量床衝撃音が階下へ伝わる度合いというのは、基本的にはマンションの床コンクリートの厚み(床スラブといいます)とその面積(梁で区画されている面積)によって決まるんです。

直貼り防音フローリングでは対応できない重量床衝撃音対策で有効なのが乾式二重床工法と言われるものです。コンクリートの上に床下地を作ってから床を張るため、直接コンクリートに音が伝わらないというわけです。

竹村工業製の二重床ジャストフロア。性能も高い。床下空間に配管を通せるため間取りの自由度も広がるのも魅力です。

ただし注意点があって、正しく、決められた内容で工事をしないと余計に音が増幅されてしまう場合があります。

ネットを見ていると二重床の方が音が伝わる、という情報も出てきたりするのですが、おそらくは正しく工事をしていないことによってそのような問題が生じているものと思われます。

そのため二重床だから大丈夫、カタログで書いてあるから大丈夫、という程度の理解をしている業者が工事をすると、所定の性能が発揮できず、問題が生じるのです。

二重床がいいな、と思う一つに理由に、小さなお子さんがいる家族には向いているということがあります。どうしてもドタバタと走り回ったりしてしまいますよね?。

その際、正しく二重床の工事をしていれば、元々のコンクリート床自体の防音性能よりも高い防音性能にできるわけですから、気を遣わなくても済むわけです。

とはいえ防音の限度はありますから、激しすぎるドタバタに対してはちゃんと「こら!」と叱っていただくことが一番の防音になりますが(笑)。

また二重床工法は、床に使う素材の自由度が広がりますし、配管位置が変更できるので間取りの自由度も広がります。総合的に考えると二重床の魅力は非常に高いのです。

 

マンションの床には張り替えリスクがほぼない無垢の木の床をおススメします

コンクリート床に直接床を張り付ける場合には直貼り防音フローリングか、カーペットくらいしか選択肢はありませんが、二重床の場合は基本的に何でもOKと言っていいほど選択肢が広がります。

その中でも私がおススメなのが無垢の木の床です。いろんな樹種があるので好みによって選ぶことができるのも魅力です。

杉の床は足裏の心地よさがたまらない。夏はサラサラして、冬はヒンヤリがかなり抑えられる。

ただ無垢の木の床は合板のような剥がれやめくれの心配はないですが、表面は傷が付きますし、汚れも合板床と比べると汚れやすいという性質があります。

それを防ぐために表面をウレタン塗料など塗装すれば汚れなどは比較的付きにくくなります。でも表面に膜を張るような塗装をすると、せっかくの無垢の木の床の足裏の心地よさがなくなってしまいます。

やはり木の素材を生かすためにはミツロウワックスなど自然のオイルで仕上げたほうが良いでしょう。

無垢の木の床を使う方は、汚れや傷をあまり気にせずどちらかというと味わいとして好ましく感じる方が多いです。

「私も木が好き」「木が汚れたり傷つくのはある程度は気にならない」と感じる方であれば、張り替える必要が基本的にほぼないと考えてもいい無垢の床は、心地よさも含めると一番おすすめしたい床材ですね。

どうしても無垢の木の床がイヤだ、という場合は先にお伝えしたWPCタイプの床にするのが一番いいと思いますし、そういう材料を使うことに慣れている会社にお願いするのがよいですね。

私たちのマンションリノベーションでは、合板床は使ったことがないので、合板床を使いたい方は依頼をしない方がいいと思いますね(;^_^A

マンションの床材には高い耐久性があることが基本

ここまで読んだ方であれば、安易に安いから、デザインがいいから、というだけで床を選択はしないと思います。

簡単に床の張り替えが出来れば問題はないのですが、現実的には床の張り替えをするのは大きな労力がかかります。耐久性が高い仕様にしてそういう労力がかからないようにすることは重要だと思います。

床は一番触れる部分でもあります。それだけにやはり心地の良い素材を使って欲しいという思いから私たちは無垢材をおすすめしています。これは無垢の木の床が合板床に圧倒的に勝る部分ですね。

反対に合板床の中でも今回おススメしたWPC床は無垢の木の床よりもずいぶんと汚れや傷が付きにくく、清掃性も高い商品です。

好みによって正解が分かれるとは思いますが、自分たちの感性とも相談しながら選択して欲しいと思います。