乾式二重床工法ならマンションの様々な欠点が解決できる

よくあるマンションの床は耐久性が低く、防音性もそんなに高くない

マンションの床材には、防音のために裏にクッションがついている「直貼り防音フローリング」(ダイレクトフロアと言ったりもします)を使っていることが多いです。直接コンクリート床面に張り付いていて、小さな物を落とした時の音(軽量音といいます)くらいなら下の階にはあまり響きません。

裏側に柔らかいクッション材が張り付いています。

また裏側には細い溝が掘り込まれていて、歩くとフニャフニャします。床が曲がることでより防音の効果を高めているわけです。

ただ写真を見てもわかるように床厚はとても薄く、繰り返し曲がる状態が続いていくと、接着剤でくっついているベニヤにもダメージが蓄積していき、最終的にははがれてしまいます。

スリットにより踏めば曲がる。防音性を高めてもいるが、耐久性を損なう原因でもある。

下の写真は実際の中古マンションの床の状況。築23年でこの状態になっていました。暮らし方や家族数などにもよるので必ずこうなるわけではないのですが、お世辞にも耐久性が高いと言えない素材なのです。

表面が傷んでくると写真のようにはがれてきます。

ちなみにこの床は軽量音に対しては効果は高いのですが、子供がドタドタ走り回るような「重量音」に対してはあまり効果はありません。重量音に対しての防音性能は基本的には床のコンクリートの厚さで決まります。

古くなるほどマンションのコンクリート床の厚さは薄くなる傾向にあるため、仮にリノベーションをして新しく同じような床に貼り変えたとしても、防音性能が高まることはないため、下の階の方にかなり配慮して暮らす必要があると言えます。

耐久的な面でも、防音的な面でも、それなりに気を使って暮らすことが強いられるわけです。自分の家なのに、ちょっとしんどいな、と思うのです・・・。

乾式二重床工法による様々なメリット

こうした欠点を解決するためにおススメしたいのが乾式二重床工法で床をつくることです。写真のようにコンクリートの上に下地をつくって空間を設けることで高い防音性が得られます。

またクッション付きの床材を使う必要性もないので、床材の選択肢がかなり自由になります。私たちの場合は足裏にも心地がいい本当の木の床をよく使っています。タイルを貼ることも可能です。

床下に空間があると重量音に対しても高い防音性能を得ることができるし、配管も移動できるのでプランの自由度も広がります。

また中古マンションの間取りは基本的にいろいろと暮らしにくい住まいになっていて、水回りの位置がそのままだと制約が大きく、良いプランがなかなか計画できません。

二重床工法なら配管のスペースが確保できるので、例えばキッチンや浴室といった水回りの位置を移動させることができます。これにより部屋の配置と大きさを変更でき、キッチンの使い勝手も大幅に向上し、リビングはより広く、収納量も大きく向上させることができるようになります。

なお二重床工法については、施工上の注意点を正しく理解しているかどうがとても重要です。知識も経験もない会社が工事をすると、かえって防音性能が悪くなることがあるからです。防音性と耐久性を踏まえ、どのような工事をしているのか、施工会社によっても幅があると思いますから、じっくりと説明を聞いて欲しいと思います。

多くの場合、中古マンションの床コンクリートの厚さは今の新築マンションよりも薄いので、防音性としては弱いであろうと想定されます。気兼ねなく快適に暮らすためにも、新築時よりも防音性能を高めることができる乾式二重床工法は必須の工事だと思います。

なお二重床工法と一口に言っても、性能が高い製品は少なく、かえって音を増幅してしまう商品もあったりするので注意が必要です。

また、二重床工法は床だけを張り替える部分的なリフォームには不向きで、その特性上、基本的には室内すべてを解体して間取りからつくりかえるリノベーション向けの工事方法ですので、簡易な工事を考えている場合、現実的には採用できないと思います・・・

いずれにしても、特性をちゃんと理解している業者に相談することが大事ですね。