個室を小さくして収納をなくす!?

暮らしにくいマンションの間取り

マンションの間取りってだいたいどこも同じです。

そもそもマンションは、コストをできるだけ抑えるため、建物の骨格と各部屋のボリュームを決め、販売しやすいように無難なプランにするのが基本的な方向性といえます(勝手な想像です)。

不特定多数の人に販売するには無難なプランの方がいいでしょうし、なるべく手間がかからないように計画することも求められるでしょう。

建設業として採算をとるためには致し方のないとは思いますが、そうやって出来上がったプランは「生活することを深く掘り下げたプラン」にはどうしてもなりえません。

例えば、下の間取りはあるマンションの3LDKプラン。だいたい70㎡くらいです。対面キッチンではないのが珍しいですね。

リビングダイニングスペースがかなり小さい印象です。キッチンが閉鎖的になっているし、収納量もかなり少ない。北面の窓は小さくて風通しも悪そうです。

もう一つ別の案件を見てみましょう。こちらも3LDK。約75㎡くらいです。これは本当に代表的なマンションの間取りですね。

対面キッチンですし。洗面脱衣室がキッチンからも出入りできるようになっているので動線を考慮した気がします。

ただ、出入り口があることでキッチンの背面スペースが少ししかない・・・。

キッチンに必要な食器棚の場所、レンジ類を置く場所、収納庫スペース、ごみ箱置き場などを考えるととても使いにくいキッチン。これどうやって使ってるんだろうか・・・?

このほかの事例をみても、多少の違いはあれど、だいたい似たような構成を持っています。

もう少し面積が大きくなったり、3方が外部に面していたりすると間取りはずいぶんと変わってきますが、それでも基本的には収納が少ない、とかキッチン周りが使いにくい、というプランが多いですね。

中には暮らしやすいマンションもあるかもしれませんが、新築マンションを宣伝しているホームページを見ても、本質的な問題はあまり変わっていない感じです。

誤解して欲しくないんですが、マンションの間取りの悪口をいいたいんじゃないのです。

客観的に、暮らす時のことを具体的にイメージしてチェックすると、そういう暮らしにくさがあるということをまずは知っておいた方がいいんじゃないか、ということです。

マンションのように比較的小さな空間で心地よく暮らすための間取りを計画するには、広く使うための工夫、細かな配慮が必要です。

そのためには今の住まいの「普通」を基にして考えている限り、限界があります。

「暮らしやすいマンションのプラン」を考える上で大事なのが「個室と収納の考え方」です。

「収納がない小さな個室」を計画すると暮らしやすくなる

個室に求めること、必要なことというのはなんでしょうか?

子供部屋であれば多くの方がイメージするのは「寝ること」と「勉強すること」または「思春期に一人になりたいときの場所の確保」です(これ、よく考えてみると子供部屋に限らないことかもしれませんね)。

なのでそのスペースを確保さえすれば成り立つわけですが、そのためには最低限どれくらいのスペースが必要なのでしょうか?

空間の広い、狭い、は人によっても感覚的な幅がありますから一概にこれ、とは言えない面もあります。

私たちのこれまでのリノベーション事例を考えると、だいたい5㎡くらいの大きさが最小スペースの目安と考えていいと思います。だいたい2.2m×2.4m位の大きさです。

弊社の打合せスペース横にそれを体感できる空間があります。それを体感してもらうと一番わかりやすいのですが、そこにベッドと机をおいても使える大きさだと、判断しています。

ここで注意したいのが、個室をただ小さくするだけの計画ではダメだということです。小さく計画する時には「個室に付属する収納を設けない」ことがポイントです。

小さな部屋に収納があると、収納の前のスペースは空けておかないと収納が使えません。その分、無駄なスペースができるんですね。

収納がなければ「壁面」ができますからベッドや机の配置がしやすくなるというわけです。また収納がない分、建具のコストも削減できます。

なお、個室を広く使いたいというご要望がある場合にはこの考え方はあてはまりません。

マンションの限られた空間を有効に利用するための一つのアイデアですし、家族構成によっても広さや部屋数は変わってきます。こういう方法もあるということですね。

個室に収納を付属させないということはどこかに収納をつくらなければなりませんが、収納するもので一番多いのが衣類です。

個室ごとにそれぞれの衣類を収納するよりも、集約した方が、使いやすいので大きめのウォークインクローゼットを設けることが多いです。

こうすることで非常に効率的に、無駄なく空間を使うことができます。

その分、まだスペースに「余裕」がうまれますから、LDK近くに細かな雑貨や生活用品を収納するスペースを設けることも十分可能です。

個室よりも家族が集まる空間を広くして、収納を充実した方が居心地よく過ごせますし、暮らしやすくなるわけですね。

回遊動線なら広く使える

マンションはどのスペースに行っても基本的には「行き止まり」です。

これも当たり前なことで何を言っているのかよくわからないと思いますが、家の中で動線を2つ以上あると暮らし方、使い方がとても便利になるんです。

下のプランを見てください。これは一番初めに掲載した70㎡のマンションのリノベーション後のプランです。

玄関からリビングへとつながる主動線とは別に、廊下から脱衣室、洗面スペースを抜けてキッチンへとつながる動線があります。

また、洋室からウォークインクローゼットを通ってタタミスペースからリビングへと抜ける動線もあります。

帰ってきてから手洗いうがいをする流れであったり、洋室へ入って荷物を置いてからウォークインクローゼットで着替えてリビングにいく流れであったり、キッチンから脱衣室へとつながる流れなどいくつもの動線があります。

リノベーション前のプランだと廊下が一つなので動線が重なって行き来がしにくいです。

この「行き来がしにくい」が実は狭さを感じさせる原因です。複数の動線があることで同じ大きさでも使いやすくなります。

これが「住まいを広く感じさせる」ことにもつながるわけですね。

また廊下に面して収納があるので単に通路としての使い方ではなく、収納スペースも兼ねていることになります。

イメージとしては収納の中を通ってリビングへ行く感じに近いと言えます。収納を確保しつつ、使いやすく、広くも感じられます。

これは水回り動線側も同じことがいえますね。通り道の途中に脱衣する場所、洗面といった用途があることで使いやすいし、空間を無駄なく使えるわけです。

マンションは多くの場合南北に長いのでどうしても北の玄関から南のリビングへ移動するための通路が必要となるのですが、廊下としてだけの役割でプランを計画すると空間を有効には利用できないのです。

このように本来の用途に通路としての機能を持たせるためには引き戸はとても相性がいい。

開けっ放しにすると、それぞれのスペースとスペースを行き来している感覚。必要に応じて個室的にも通路的にも空間を変えることができるわけです。

エアコン1台で家全体を冷暖房できる

また、全ての引き戸を開放するとマンションの中は家全体が一つの部屋のような空間になります。

するとエアコン一台で家全体を比較的簡単に冷暖房できます。実際に70㎡くらいのマンションであれば、14畳用のエアコン1台で家全体を冷暖房することができています。

これが出入口がドアで、個室として閉じるような使い方になっていると、空気がうまく回らないのでさすがに1台では無理が出てきます。

もちろん、引き戸であっても閉じてしまえば同じように空気が回りにくくなるので、1台でうまく冷暖房できるレベルまでにはなりません。

開放して使うと一台で冷暖房ができうるポテンシャルがあるので、それを理解して暮らせば、省エネルギーでありながらも非常に快適な暮らしが可能となるわけですね。

なお、プランが開放的であっても、サッシの断熱強化、外壁の断熱強化ができていないとそこまで快適にはなりにくいでしょうから、見えない部分ももちろん大事です。