マンションリノベーションの二重床の問題って何?

設計の仲田です。マンションの床は直接コンクリートに張る直床工法が多いですが、私たちのマンションリノベーションでは、二重床工法を必須としています。

直床工法は比較的安価ですが、いろいろとやっかいな欠点が多く、正直、おススメできないんですね。

二重床工法なら床下に配管スペースができるので、間取りも大きく変更できるし、遮音性能など、様々な面で直床工法よりも優れてるんです。

ただひとくちに二重床工法といっても、いろいろなメーカーさんの商品があって、性能にも違いがあります。

マンションの状況と使用する二重床によっては、かえって音を増幅してしまう場合も・・・。

マンションの床工事って、なかなか多くの問題をはらんでいるんですが、一般の方にはあまり知られていません。

そこで、中古マンションリノベーションの床工事についての注意点やポイントについてまとめてみました。

 

直床工法を採用しない理由

直床工法の床材。裏側には細いスリットがあり、柔らかいクッション材がついている。

二重床工法の前に、なぜマンションリノベーションでは直床工法がおすすめできないのかについてお伝えしておきます。

直床工法で使う床材は上の写真のようになっていて、歩くとふにゃふにゃと柔らかい。このクッション性で遮音性能をもたせています。

ただ写真を見てもわかるように床厚はとても薄く(約9mm程度)、薄いベニヤが接着剤で数層重なっている構成です。中には表面が特殊なシート印刷された床もあります。

なお直床タイプにはいろんな種類があるので耐久性が高いタイプもありますが、そこまで考えて採用している事例が多いのかどうか・・・?

参考ブログ:「マンションの床に必要な耐久性と防音性」

 

こうした床材は耐久性が非常に乏しくて最終的にははがれてしまいます・・・。

下の写真はリノベーション前の築23年の中古マンションの床。暮らし方や家族数などにもよるので必ずこうなるわけではないのですが、お世辞にも耐久性が高いと言えない素材なのです。

耐久性が低いので、表面がはがれてくる。中には築10年程度でこうなってしまう物件も・・・。

 

またこの床はモノを落とした時のコツン、という軽量音に対しては効果は高いのですが、子供がドタドタと走り回るような重量音に対してはあまり効果はありません。

基本的には、重量音に対しての遮音性能は、スラブ厚さ(床のコンクリートの厚さのことです)とスラブ面積(床を支える梁で区画された面積)で決まるんですね。

一般的には古くなるほどマンションのコンクリート床の厚さは薄くなる傾向にあるため、下の階に音も響きやすいわけで、騒音トラブルも多くなります。

耐久的な面でも、遮音的な面でも、かなり気を使って暮らすことが強いられるわけで、自分の家なのに、それはなかなかしんどいですよね・・・。

だからリノベーションでは直床工法は採用したくないんです。

 

マンションの床に必要な遮音性能は保証されていない

直床工法の欠点がわかったところで、では、実際にマンションに必要な遮音性能がどういうものかご存じでしょうか?

まず、一般的なマンションでは管理規約で、修繕工事の際には床の遮音性能は推定L等級のLL-45を満たすことを定めています。なお数字が小さいほど性能が高いです。

マンションによってはより厳しいLL-40という基準の場合もあります。

ただし、この規定は軽量音に対してのもの。基本的には重量音については先ほど説明したスラブ厚さとスラブ面積で決まるので、内装工事で重量音に対する遮音性能を上げるということをそもそも想定していません。

「ふ~ん、なるほど。でもそれが何かまずいの?」と思うかもしれませんね。

でもこの「重量音に対しての規定がない」ということには大きな問題があるんです。この点は後ほど詳しくお伝えします。

 

さて、この推定L等級という規定の中身なんですが、実験室で最良の条件下による試験結果から算出した推定値であり、多くの場合実際の建物では再現性がありません。

車のカタログ燃費と実燃費に差があるように、性能を保証するものではないんですね。

その他にもいろいろ問題があったので、2007年に廃止されて現在ではΔL等級に変わっていますが、いまだに多くのマンションの管理規約では推定L等級が基準のため、多くのメーカーでは推定L等級の基準も表示してます。

性能も保証できないし、そもそも軽量音だけの規定だし、その規定自体にも問題があったわけです。

かなりいい加減な状況だということがわかりますね。

ではメーカーが提供している二重床の実際の性能ってどういうものなのか?

 

二重床の遮音性能は新基準でその実力がわかる

実例を見てみましょう。以下細かな数値とか、グラフが出てきますが、苦手な人は詳しく見なくても大丈夫です。

下のグラフと表はとある二重床メーカーのカタログからの抜粋。古い基準(推定L等級)でLL-40を満たすという高性能仕様となってます。

 

これなら安心、と思うかもしれませんが、この同じ二重床を新しい基準(ΔL等級)で評価したのが下の図です(上記図の横に掲載されていたもの)。

赤枠の部分は重量音の低減量を示しています。数字がマイナスになっているのがわかりますよね?

実は、これ、音を増幅しているという意味なんです・・・。

 

 

こうした評価の違いが出るのは、古い基準はコンクリート厚が150mmで、新しい方はコンクリート厚が200mmで試験をしているためです。

床の遮音性能は「生じた騒音を低減させた量」で評価していますから、床の厚さが厚くなればなるほど低減させる量が小さくなっていくんですね。

 

 

ここは少しわかりにくい部分かもしれません・・・。

いいかえると、二重床自体の基本的な遮音性能が高くないと、床厚が厚くても、ちゃんと騒音を低減させることができないんですね。

だから新しい基準で評価をするとその二重床の遮音性能の基本的な高さが丸裸にされるんです。

ただ、古いマンションの床厚は200mmよりも薄い場合が多い。なので実際に増幅まではさせないかもしれません。150mm厚で試験をしたカタログ表記されている遮音性能の低減量はマイナスになっていませんし。

とはいえ、現行の基準は2007年から適用されていて、ずいぶんと時間も経過してます。

にもかかわらず、いまだに重量音が増幅されるというレベルの二重床。これを知った時はちょっと衝撃でした・・・。

しかもこれは一部のメーカーがそういう商品なのではなく、ほとんどの二重床メーカーの製品がそんなレベルなんです・・・。

※ここでの記事は2020年6月の時点で各メーカーのホームページに掲載されているデータを見る限りでの実態です。

 

最高等級の遮音性能でも音を増幅させる可能性がある問題

また重量音の性能等級自体にも問題があります。

じつは重量音の遮音性能の等級って、最高等級でも音を増幅させてOK!っていう内容なんです。ちょっと意味がわからないですよね?

 

下図はΔ等級で規定されている重量音の場合の等級表です。

 

 

一番性能が高いΔLH-4という性能でもほとんどの音域で音を増幅させていてもよいという内容なんです。

これ、ものすごく怖い基準だな、って思いませんか?性能を落とすことを認めているという、ありえない設定・・・。

おそらくですが、当時の一般的な二重床の基本性能をベースにして決めたんだろうな、と。そうでないと現状の二重床自体が販売できなくなってしまう。

本来であれば、そうした性能が確保できないのであれば、各メーカーは製品の性能向上をすべきだと思うんですが・・・。

 

ここでお伝えしたいのは最高等級=性能が高いではないということです。

なので「うちの二重床はΔLH-4等級ですから!」っていう説明では性能が高いかどうかは不明確なんです。

重量音に対しての遮音性能は、マイナスで表記される音域がないかどうかを確かめる必要があるんですね。

ここがとても重要です。

 

安心できる二重床は竹村工業のジャストフロア―

「二重床が音を増幅させるようなものならわざわざ使う必要がないのでは?」

と思いますよね。全くその通りで、そんな低性能(というか性能を落とすんだから低という表現も変ですが)な商品を使う理由が見当たりません。

でもちゃんとした二重床なら重量音をしっかりと低減させる高い性能をもつものがあるんです。

私が確認した限りでは2社ありました。

そのうちの1社が竹村工業さん。この会社がつくる「ジャストフロアー」が二重床の中ではたぶん、一番性能がいいと判断しています。

子供が走る音の特性に対しての安心感も高いジャストフロアー

ここの二重床のカタログはかなりマニアックな内容で、上記のような測定データやグラフがたっぷりと掲載されています。

正しくない施工方法による騒音トラブルの問題なども取り上げていて、その熱量や技術的な裏付けなど、一番信頼できる商品だと思いますね。

ちなみにジャストフロア―で私たちが採用している二重床の性能データが下記。

 

 

赤枠を見てもマイナス表示はなし。それに集合住宅での苦情の原因となる歩行や小走り、椅子からの飛び降り(小さな子はやりがち・・・ (;^_^A )の音に近いと言われているボール音の低減量でも高い遮音性があることもわかる。

こういう詳細なデータや検討が他メーカーでは見受けられないんですよね。

その他、施工方法という面についても他社さんよりもかなり詳細な検討がされている印象です。

 

ちなみにこの商品、とても重たい・・・。パネルサイズは453×1820で、他社製品はだいたい600×1820サイズ。サイズが小さいのに重たい・・・。

木毛セメント板なので重たいのは当然ですが、この重たさも防音性が高い理由の一つかもしれませんね。

正直、軽い方が工事は楽。しかも他社製品はコストもより安い。となれば当然、多くのリノベ会社では竹村工業さんの二重床を使いません。

でもここは可能な限りの配慮をすべきだと思うんです。ちゃんと検討したら竹村工業さん一択だと思うんですけどねぇ・・・。これだけ推してはいますが、竹村工業さんから何かもらってるわけではありませんからね(笑)。純粋にいい商品なので。

 

唯一、残念なのが、全然名が売れていないこと。「二重床」で検索してもぱっとは出てこない・・・(;^_^A

それにホームページ自体もわかりやすいとはとても言えない・・・。

いい商品が全然認知されないというのはよくある話なんですが、認知活動についてはより頑張ってほしいなぁ、と思います。

 

本物の二重床はリノベーションの可能性を広げてくれる

性能が低い二重床を使うのは問題も多いですし、そもそも使わない方がいいと思います。

実際、ネットの掲示板を見ると二重床でも騒音トラブルとなっている事例も見受けられます。

二重床は工事の際にも注意すべき点がいくつかあるんですが、正しい施工知識がないと、たとえ高性能な二重床を使ったとしても音が増幅されてしまうこともあるんですね。

そうした問題はありますが、それらは全て、技術的、知識的な問題。

本来なら、ちゃんとした性能を発揮する二重床なら、コンクリート厚が薄い中古マンションの遮音性をかなり高めてくれます。

重量音自体は床コンクリートの厚みで決まるはずですが、それを以前よりも向上させることができるわけですからね。

それに、小さなお子さんがいる家庭にとっては特に、安心できます。

いくらドタバタしないと注意しても、子供ですから多少はやんちゃもするでしょうし。

完全な遮音をするわけではないので、無制限に飛び跳ねたり、暴れまわったりとしてもOKという意味では無いんですけどね (;^_^A

でもものすごく気を使わなくても大丈夫な状態になるというのは、気持ちも楽ですよね。

暮らしてからの安心にもつながりますから、基本性能がちゃんとしている二重床を使うことは必須ではないでしょうか。

ちょっとわかりにくい部分もあったかもしれませんが、リノベーションをするなら、床工事の下地には十分な注意を払って欲しいです。

どこの会社でリノベーションをするとしても、必ず、詳細な説明を聞くようにしてくださいね!

小上がりから飛び降りる、なんて時も多少なら安心ですね。限度はあるので、あんまりしない方が嬉しいですけどね (;^_^A