「新建材」と「既製品」を使わないマンションリノベーション

設計の仲田です。工事中のオーナーさんと現場で話をしていた時に「マンションでも床や天井にこんなに木を使った工事ができると思わなかった」というようなことを伺いました。たしかにマンションリノベーションの事例をみると、「木」を前面に使った住まいというのはあまり主流ではないみたいですね。木に限らず、珪藻土を壁に塗ったりと、自然素材を使ったリフォーム、リノベーションというのは私たちの会社だけではなくて、他の会社さんでもたくさん事例があります。もちろん、まだ少数派という認識はしてましたが、それが特別だというイメージを持っていませんでした。でも一般の方にとってはどうやらそうではないみたい。まあ確かに、マンションが下の写真みたいな雰囲気になる、というのはあまり一般的ではないかもなぁ・・・。

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今さらですが、マンションでもたくさん木を使うことができるんですね(11階以上で100㎡を超える場合は除きます。まあ事例としてはかなり少ないと思いますが)。マンションの場合、つるつるピカピカした合板の床とか、化粧シートが貼られた枠材等を使った住まいの方がもちろん圧倒的に多い。そういう材料のことを「新建材」といいます。新建材の利点はいくつもあって、まず安いですし、木みたいに割れたりすきまができたりなどの変形がほぼないです。つるつるしてるから拭き掃除がしやすいですし、色も豊富だから好みに合わせて選ぶこともできますね。

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上の写真はリノベーションする前のある現場の写真。よくある雰囲気ですね。こういう住まいをリノベーションして新しくしたときに、色を変えたり雰囲気を明るくしたりしたとしても、同じような質感の住まいだとどうしても好きになれないんですね・・・。新建材でつくられた住まいと木と自然の素材でできた住まいを比べると、たとえ間取りが同じでも、色が同じようなものでも、実際の住まいから感じるものが全く違うんです。不思議なんですが、壁が同じ白でも左官屋さんの白い塗り壁と、ビニルクロスの白い壁は写真で撮ってもあまり違いは判らないと思いますが、実際に見ると「雰囲気」が違うと身体が感じるんですよね。まさに「体感」しないと違いがわからない。

これはもう、理屈ではないところ。好きな人は好きですし、ダメな人はダメです。まあ、強制するものでもないんですが、やはり自分たちが本当に好きなもの、イイと思うものをお勧めしたいので、私たちは新建材は基本的に使いません。

あとメーカーさんが製品化した「既製品」のシステムキッチンとか洗面化粧台というのがあまり好きじゃなくて、使い方に合わせてつくってしまいます。リビングに近い所にあるキッチンが既製品だとどうしても「唐突な感じ」というかちょっと違和感が出てしまうんですが、「造作」でつくるととても馴染みがいいんですね。洗面もすっきりして清潔感もでてくるし、愛着がわく感じがするんです。下の写真は洗面台を造作で製作したもの。洗面ボウルを木の板に組み込んで、大きな鏡とアクセントのタイルでとてもいい雰囲気になります。洗面ってあまり人に見せる場所ではないですけど、見せたくなる感じ。

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浴室もできればユニットバスでない方が好きですが、漏水の懸念とコスト面で浴室だけはユニットバスを使うことが多いです。ただハーフユニットという下半分がユニットバスで、上半分はタイルや木を張ることもできる方法があって、これだとかなり感じがいい。ただコストアップになるので浴室にどこまで求めるか?というところでしょうか。

世の中のリフォーム・リノベーションの流れってあまりこういう方向性ではないみたい。こういうやり方って、図面も詳細図がたくさん必要だし、工事もいろいろと配慮が必要で現場管理も大変。でもまあ、こういうやり方をしている会社がこの地域にいてもいいだろうと思ってます(笑)。やっぱりできあがりの住まいが本当に心地いい空間になるんですよねぇ・・・。苦労する分だけ、住まいの心地よさ、家でゆっくりくつろぎたい度、というのがとても高くなるなぁ、と思います。完成した物件を見学してくれた方の言葉や、実際に暮らしているオーナーさんの言葉を伺うと、そう強く感じるのです。