マンションの収納は収納率が8%以上なら大丈夫?

収納率、という言葉を聞いたことありますか?床面積に対してどれだけ収納面積があるか?という意味です。

ネットで調べてみたらマンションでは8%以上、一戸建てなら13%以上は計画しましょう、という説明がなされています。

例えば一戸建ての場合、30坪の床面積(約100㎡)なら、13㎡以上は計画しましょう、ということですね。㎡数で言うとなかなか分かりにくいですが、13㎡はおおよそ8畳くらいの部屋になります。

ここでイメージしやすいように、よくあるプラン例で考えてみましょう。30坪位の分譲住宅的な間取りだと、たいていは2階に3部屋ある3LDKタイプだと思います。

主寝室には2畳分のクローゼット、残りの2部屋はそれぞれ1畳ずつで、合計で4畳分。残り4畳のうち、2階納戸に2~3畳分、その他1階に1~2畳分という感じですね。まあ、それなりに収納量がある雰囲気です。

でも単純に一定以上の面積があるから収納は大丈夫、という考え方はちょっとまずくないかなぁ?と思うんです。

自宅に分譲住宅のチラシがあったら見て欲しいのですが、2階に収納が集中していて、1階は収納が少ない間取りになっていませんか?

あっても階段下収納が少し、という感じ。これでは1階ってモノがあふれて雑然としそう。

だって普通は1階には生活に関連する細かなモノや1階に欲しいと思うようなモノがたくさんあります。ちょっと挙げてみましょう。

・郵便物 ・筆記具、はさみ、テープ等の文房具系のもの ・常備薬 ・スマホ、デジカメ、ビデオ等に関わる関連機器(充電器など) ・電化製品の説明書 ・アイロン類 ・パソコン、プリンター、無線ルーター等の情報機器 ・新聞とってればどこにしまうか ・空き缶、プラゴミ等の分別したゴミの一時置き場 ・掃除機 ・電池 ・本、漫画、雑誌など ・ドライバーなどのちょっとした工具 ・ゲームする人はゲーム機など関連のもの
 ・日常の着替え等

などなど。上記のモノは必要ない人もいれば、他にもまだある人もいます。これらは2階に収納できたとしても取りに行くのが面倒くさいので使いにくいことこの上ない。

そのため整理タンスやカラーボックスを1階に置くことになるのですが、そうなると家の中は片付けたとしても雑然とした印象になります。

単純に収納する場所があるだけ、大きいだけでは暮らしやすいというわけではないと思います。

本当は過剰なストックをできる限り減らし、不要なモノは捨てるなどして整理した方がいいと思いますが、なかなか実践できない場合が多いですよね。

モノってその人のライフスタイルとか思い入れとも密接に関連してくるので、捨てる、減らすということができない場合もありますし・・・。

いずれにしても1階の収納量が少ないプランは多く、生活に必要な小物を置くスペースが足りなくて暮らしにくい住まいだと思います。

なので戸建ての場合は1階(LDKがある階)の収納計画をよく考えることが大事ですね。

なんか戸建てのことばかりですね。肝心のマンションの収納計画について言わねば!

マンションの場合、中古でも新築でも収納率がどうこうの前に、基本的な収納量自体が少ない例が多いですね。たいていは個室にCLOがそれぞれあって、廊下に小さな収納があるという感じでしょうか。

LDK周りの収納計画がとにかく貧弱なのがマンションの特徴かもしれません(苦笑)。

で、平均的に売買されている中古マンションの大きさ75㎡で収納率を考えてみると、8%だと6㎡になります。これ約3.6畳位。暮らす人数によっても違いますが、さすがに足らない・・・。

というか、マンションの収納は8%以上ってだれが言い出したんだろう??

マンションであろうが、戸建てであろうが、生活に必要なモノの量はあまり変わりません。であれば%で収納量を判断することにはあまり意味がなくて、必要なモノがちゃんと収納できるかどうかを考えることの方が重要です。

また収納計画のポイントの一つが奥行です。棚の奥行が押入みたいに80センチ位あっても小物類を収納する場合には奥行はそんなに必要ないし、反対に奥行があることで使いにくくなります。

奥行が深い収納は収納の量自体は増えるんですが、使いやすさとは別だということです。数字上の収納量は多くても、無駄なスペースができたりして有効に使えない、あるいは使いにくいというわけです。

なので収納は有効に使えること、使いやすいこと、という点も考慮されているべきだと思います。

実際に私が計画するときは、小物関係はだいたい奥行が30~45センチ程度、少し大きなものや衣類は60センチ程度にしてます。

布団類は最低でも75センチ以上できれば80センチ以上という感じです。以前、他社さんのとある住まいを見学しに行った時の奥行が70センチだったのですが、引き戸の開け閉めの際に布団が引っ掛かってしまってやりにくかったんですね。

もう5センチあるとやりやすいのになぁ、ということを実体験しているので、最低でも75センチ以上というのはこの体験からきてます。

廊下に面した収納は効率も良い。奥行を300~450で計画した例。

あと、収納するものは使う場所の近くにあるようにしたい。キッチンだと食品庫は近くに欲しいですよね。下の例はキッチン横に縦長に計画した収納。パイプスペース位置にあわせているので奥行は浅めですが、便利です。

キッチン横の可動棚はいろいろな小物が収納できて便利

またマンションの場合、玄関まわりが狭くて小さな玄関収納があるだけということが多い。でもベビーカーとかその他いろいろ収納したいという要望もあって、ある程度余裕が欲しい。

なので玄関まわりはできるかぎりスペースを取る方向で提案します。

まあ、マンションの場合はそれでも限界はあるんですが、それでも少しは増やしたい。ちょっと増やすだけでずいぶん使い勝手が向上しますしね。

玄関横に細長い収納。玄関を広く感じつつ、土間収納として重宝する。

あとは下の写真のように、通路も兼ねたWCLOもよく計画します。動線的に広がりもできるし、風通しもよくなるんです。それに引き戸を開放しておくと温度差も生じにくいという利点もある。

北側の部屋とリビングを繋ぐ位置にあるWCLO。正面の格子戸の奥は小上がり畳につながるリビング。

こんな感じで、単純な量や面積ではなく、使いやすさ、無駄にならない奥行、動線を兼用させるといった計画をすることで、モノがちゃんと収納できるようになるし、小さめの空間でもうまく利用することができるんです。

単純に収納スペースを確保する、個室に収納を設けるという計画の仕方だと、マンションという空間をうまく活用できないな、と感じます。

ちなみに小上がり畳なんかも良く提案しますが、その下には引出しを設けたりして収納とします。でも、この場合の収納量って面積で言うと広いですが、容積で言うと少ない。

使い勝手もいいし、結構収納できるけれど収納率的な評価はしにくいタタミ下の収納

こういう収納はなかなか収納率では評価できません。でもけっこう重宝したりする。

なので何となく収納率という数字で示すことで収納は充実してるっぽく感じますが、あまり意味がない指標な気がします。特にマンションでは。

数字で示すと様々なことが客観的にあらわせるのでいい面はあるのですが、それが意味することをちゃんと理解することが大事だなぁ、と思いますね!