4人家族に必要なマンションの広さを考える

設計の仲田です。中古物件を購入してリノベーションする場合、物件の広さに大きくかかわるのが、そこで暮らす人の数。

普通は家族数が増えればその分大きくなるはず。でも現代の多様な価値観の中で、暮らす人数に比例して住まいの大きさを決めることは正しいことなのか?

 

たとえば4人家族に本当に必要な床面積ってどれくらいなんでしょうか?

今回はリノベーションを前提にした場合に適切な床面積をどう考えたらいいのかを探っていきます!

 

4人家族なら85~95m²が必要?

国土交通省の住生活基本計画によると、4人家族で都市部に暮らす場合、子供が小さいうちは85㎡以上、大きくなったら95㎡以上が豊かな住生活の実現の前提条件なんだそうです。

参考】国土交通省 住生活基本計画(令和3年3月19日)  

なんでしょうね、この非現実感は・・・(;^_^A

85㎡のマンションを購入した場合、子供が大きくなったら条件を満たさないから豊かな生活は実現できません、ということなんでしょうか?もしくは大きくなったら買い替えろということ・・?

そもそも85~95㎡のマンションを購入しようとしたら、新築マンションは多くの方にとっては、まず手が出ない価格帯(管理費とかも踏まえて)になります。

あまりにも現実的でない大きさだなぁ・・というのが個人的な感想です。

実際、大都市圏の子育て世帯の居住面積水準達成状況では6割以上が誘導居住面積水準に達してませんからね(平成30年時点でも)。

 

もちろん、広いことは悪いことではないです。ただその環境を手に入れるために過剰な負担を強いられる、あるいは途中で破綻してしまうようでは何のための住宅購入なのか?

 

しかもそんな高い新築マンションであっても、家の中は温度差があるし、冬は結露でベタベタになるし、収納も少ないし、キッチンも狭くて使いにくいし、リビングにはモノがあふれていて雑然としてるし・・・

これ、実際にマンションに住んでいる方々の意見です。

 

すべてのマンションがそうだとは言いませんが、これらの不満は、面積が大きければ解決できる問題ではないんですよね。

 

こうしたマンションの暮らしにくさの原因は、断熱性能が不足しているということと、間取りが画一的で暮らしを考えていないから。

 

この点についてなんら配慮せずに大きさだけで豊かさの実現を目指している限り、いつまでたっても本当に豊かな生活なんて実現しないと思います。

 

3LDKを選べば豊かな住まいになるのか?

大きさとは別に、住まいを選ぶときの条件でよくあるのが、2LDKとか3LDKという部屋数の構成で住まいを検討する方法。

この部屋数+LDKという表現はすごく一般的ではあるんですけど、住まいを暮らしにくくする考え方だと思います。

 

例えば下図は75㎡の一般的な3LDKマンション。たぶん、3人~4人家族の方が検討する条件ですね。

この住まいでは、主寝室、洋室、和室の各個室の面積の合計は約27㎡。でもLDKの面積の合計は約26㎡。

2005年築のまだまだ新しいマンションですが、暮らしやすい間取りではない・・・

家族みんなが過ごすであろうLDKの方が面積が小さいんです。

もちろん、面積が小さいからダメ、というわけではない。

けれど、限られた面積の中では、個室面積が大きすぎて、設計の方向性としてのバランスが悪すぎます。

 

マンションって基本的にこういう間取りばかりなので、多くの方がマンションってこういうものなんじゃないの?という感じだと思います。

 

でも実際は暮らしにくいのに、これに違和感がない。その感覚が大きな問題なんですね。

 

これだけ多様な価値観があって、生き方もいろいろなのに、間取りに対しては疑問がない。業者側の都合でつくられた「一般的な家」が「普通」だという感覚に無自覚であることは理解しておいたほうがいいと思います(ちょっと辛口ですけれど・・)。

 

つまり、何が言いたいのかというと、面積と部屋数で暮らしの豊かさを評価している限り、豊かな暮らしなんて手に入れることはできないということなんです。

 

じゃあ、実際にどうやって大きさを考えたらいいのでしょう?これまでにリノベーションをしてきた事例を見てみましょう。

 

リノベーション事例で必要面積を確認

下の表はこれまでに私たちがリノベーションしてきた方達の世帯人数別にまとめた床面積です。

非常にバラエティ豊かで幅広いことがわかります。

4人で暮らす場合、70~75㎡くらいが多いですね。

ちなみに他の事例を見てもかなりバラバラ。

面白いのが2人暮らしの場合です。60㎡くらいの方もいれば、90㎡超えてる方もいるという(笑)。

またちょっと番外編ですが、5人家族で68㎡という方もいらっしゃいます。お子さんが3人なんですが、広い子供部屋を3人で使うという考え方なんですね。

あまり一般的ではないのかもしれませんが、私自身はすごくいい考え方だな、って思いました。

将来的に子供は出ていきますし、こういう選択ができる人って豊かに暮らせるだろうな、って思います。

 

いろんな方のいろんな条件でリノベーション設計をしてきて思ったのは、暮らす人数で面積は決まらない、ということです。

モノが多ければ暮らす人数が少なくてもたくさんの収納が必要になりますからその分面積は広くなりますし、その逆に人数が多くてもモノが少なければ小さめでもいけるかもしれません。

また子供室の考え方によっては広くも狭くもなる。

 

ネットを検索すれば、一般的にはこれくらい必要ですよ、という情報を手に入れることは可能です。でもそれでは自分の暮らし方に適切な大きさの住まいを手に入れることはできません。

 

一般的な答えは参考情報であって、それが自分にとって意味のある情報なのかどうかは別の話です。

自分たちにとって最低限必要な広さを、自分で考えること。それこそが家づくりの本質の一つなんです。

 

そのため、答えは簡単に出ません。自分たちの暮らし方、子育てをどう考えるか、子供が独立した時のこと、モノとの付き合い方など、考えることがたくさんあるから。

 

いろいろ考えていく中でボンヤリとイメージが出てきたら、リノベーションをしてみたい会社に行って、いろんな設計事例を見ることが大切だと思います。

事例を見れば、思っている以上に大きさは必要なかった、あるいは必要だった、ということが具体的に見えてきます。

 

家族4人で豊かに暮らすリノベーション事例

先ほどの75㎡3LDKのマンションを実際にリノベーションした住まいの事例を見てみましょう。

個室が占める面積を可能な限り小さくし、その分LDKや収納に配分すれば、家族が過ごすスペースが居心地のいい空間になります。

リノベーションにより暮らしやすくなったのはもちろん、心地のいい豊かな空間に変わる。子供室も可能な限り小さく計画。

図面で見るとなかなか広さの感覚はピンとこないと思いますが、見学会などで体感すると、図面のイメージよりも広く感じたりします。

リビングから見た様子。ダイニング横のヌックは室内干しも兼ねてます。家族が程よい距離感をもちつつ、一緒に過ごしやすい空間です。

暮らしやすくて心地のいいウールカーペットのリビング。細かな収納もたくさんですっきりと暮らせます。

壁付けのキッチンは配膳、片付けが楽。対面でなくても子供の様子は背中越しに十分わかる。洗面へとつながる動線も便利。

細かな解説は省略しますが、ほんと、居心地がいい・・・。

こういう事例を知っていただければ、国交省が設定しているような85㎡以上の面積がなくても十分快適に暮らせます。

個人的な感覚でも70~75㎡くらいが4人家族の一つの標準的なサイズ感だと思いますね。

 

参考までに、下記画像クリックでインスタグラムでキッチン周りの部分的なルームツアーも体感できます~♪

クリックしたらインスタグラムで動画が見れます♪

 

マンションの欠点を解決しているか?

最後に補足として。

一口にマンションリノベーションといっても、会社によってそのテイストも方向性も大きく違います。予算のこともあるし、価値観によってもその評価は変わりますしね。

たぶん多くのリノベーションでは既存の壁や天井を部分的に流用し、配管もそのまま再利用する方向性が主流だと思います。

でもそうした部分的なリノベーションは将来的な配管の漏水の懸念はあるし、断熱改修もしない。既存の間取りがベースでもあるのでマンションの欠点の解消が十分でないことが難点。

 

コストを抑えるための方向性なんでしょうけど、そのことをオーナーさんがちゃんと理解しているかどうか?その点、プロとしてアドバイスはするべきだと思います。

 

私自身は、マンションが持つ欠点を解決し、快適で暮らしやすい住まいにするには、現況をすべて解体し、下地からすべてやり変えるフルスケルトン型のリノベーションは必須だと考えます。

全てを解体することで配管も更新でき、断熱改修も容易にできる。

とはいえフルスケルトンにも様々な制限はあります。

中身をすべて解体して新しく間取りをつくるとはいえ、窓の位置は変えられませんし、構造の柱や梁が出っ張っていて邪魔な場合もある。

水回りの位置を変更するとしても、上下階を貫通する排水管の位置が決まっているので、自由に変更するというわけにはいかない。

 

こうした制限の中でうまく間取りを計画するためにはリノベーションプランを考える設計担当者の能力に大きく左右されます。

 

例えば水回りの配置を移動する計画の場合、排水ルートをどうするか?

現場での配管工事に関しての知識がないとうまくできないし、知識がなければそもそも配置を移動する計画すら検討できません。これではプラン提案の幅がかなり小さくなります。

【参考】マンションリノベーションのプランレベルは配管工事のことがわかっているかどうかで決まる!?

 

また温熱性能を高めることでどれくらい快適になるのか?

断熱補強工事をしたからといって、必ず家の中に温度差が生じないわけではないんです。

快適な住空間にするためには、プラン上の工夫も不可欠なんですが、そうした目に見えない空気の流れについて理解している設計者は、マンションリノベーションにおいては残念ながらかなり少数派です。

【参考】マンションリノベーションで断熱工事が必要な理由と工事の中身

 

ちなみにこれらはプランを計画する前の段階のお話し。他にも床下地に関する知識も重要ですし、肝心の暮らしやすい間取りをつくる能力や、デザイン能力、耐久性やメンテナンスを踏まえた素材選定など、いろいろと幅広い知識と経験が必要になってきます。

 

そういうことを踏まえたうえで、最終的に提案されたプランがマンションの暮らしにくさを解消しているか、自分たちの暮らし方や価値観に合っているのか。そこが重要です。

 

すこし話が脱線してしまいましたが、面積の設定は非常に大事なポイントです。迷ったらぜひ、意中のリノベーション会社に相談してみることをおすすめします。

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